交通事故の後遺症認定とは

交通事故の後遺症認定とは

交通事故によるケガの程度はさまざまで、治療により完治するものもあれば、治療したものの何らかの障害が残ってしまう場合もあります。後遺症が残ってしまった場合、それ以降の生活に重大な支障が生じてしまうことがあるので、それに見合った慰謝料を請求する必要があります。交通事故での補償には強制保険の自賠責保険と任意保険がありますが、補償を受けるためにはいわゆる自覚症状による後遺症では不十分です。これはどういう意味かというと、自動車保険の約款上、慰謝料請求が認められるのは、医師にこれ以上回復の見込みが無いと判断された場合に限られます。この状態のことを後遺症認定(症状固定)と呼びます。

損害賠償請求

交通事故によるケガの治療費や休業補償などの補償は後遺症認定前でも受けられます。ケガの治療費が補償されなければ、治療を続けることが経済的に困難になる可能性もありますから、当然のことといえるでしょう。後遺症認定前でも慰謝料請求はできますが、後遺症により生活に支障が出てしまった分についての慰謝料などはその時点では補償されません。医師により症状固定と判断されることで、症状固定以降に発生する損害についての補償を受けることが可能になります。

後遺症認定の重要性

後遺症認定があるかどうかはとても大切です。なぜなら後遺症認定がなければ後遺障害に対する補償がなくなってしまうからです。後遺障害は14等級~1等級まで分かれていて、このいずれかの等級に該当する場合、後遺障害慰謝料と逸失利益に基づく損害賠償金が支払われます。14等級が最も低い等級になりますが、仮にケガの程度によって14等級とは認められない場合、14等級で認められた場合に得られた慰謝料を含む賠償金を受け取れなくなってしまうため、示談金の総額は少なくなってしまいます。いわゆる後遺症認定の境界線上にある場合、後遺症認定を受けられるようにする必要性は非常に高いといえるのです。

後遺症認定と障害等級

後遺症認定を行うのは医師ですが、等級はどのように決まるのでしょうか。厚生年金を例に挙げてみると、厚生年金には障害年金制度がありますが、障害等級を判断するのは社会保険事務所です。つまり医師が判断するわけではありません。自動車保険も同様で、障害等級を判断するのは医師ではなく損害保険会社です。障害等級を認定してもらう際に、等級によって補償額が変わるわけですから、少しでも補償額を多く受け取れるようにする必要があります。損害保険会社は被害者の被害状況や障害の程度により等級を判断するため、適切な等級が適用されるように被害者も行動する必要があります。

等級認定の流れ

交通事故の被害者が等級認定をしてもらう方法は2種類あります。一つは自賠責保険に対して被害者請求をすることです。被害者請求とは自賠責保険に認められている補償の請求方法で、被害者が自賠責保険に対して補償を求めることを指します。実際に等級を認めるのは損害保険料算出機構です。損害保険料算出機構は提出された書類に基づいて等級を判断します。任意保険もそれに似ています。任意保険の場合は被害者が自ら行うのではなく、保険会社が被害者の代わりに損害保険料算出機構に書類を提出し判断を仰ぎます。

書類による認定

障害等級認定はすべて提出された書類に基づいて判断します。つまり書類の内容がすべてを左右するということです。書類の内容次第で等級が高くなったり低くなったりします。そのことを考えると、障害等級をより正確に判断してもらうためには書類の提出が重要だということが分かります。どうすればより正確かつ納得できる障害等級認定をしてもらえるのでしょうか。その答えは弁護士にあります。弁護士は保険会社との示談交渉に介入できる権利を有しています。裁判所への訴訟代理権も弁護士が有しているため、示談交渉をトータルで有利に進めることが可能です。いざという時弁護士に相談することが成功のカギなのです。

交通事故の後遺症認定時期

交通事故の後遺障害認定は被害者の申請に基づいて行われます。後遺障害認定を受けるためには医師による症状固定が必要です。なぜなら症状固定に関する医師の診断がなければ、今後回復する見込みがあるのかそれともないのかを判断できないからです。そのことを踏まえて、後遺症認定の時期を知っておく必要があります。申請のタイミングを把握しておけば、後遺症認定後の慰謝料請求や逸失利益の請求がしやすくなるからです。

自賠責保険の後遺症認定申請

後遺症認定の方法は2種類あります。それは自賠責保険の被害者請求権を利用した被害者請求と、保険会社が申請する事前認定です。自賠責保険は加害者が被害者に対して治療費や慰謝料、休業補償分を前払いし、その後加害者が自賠責保険に対して請求を行いますが、加害者が支払いに応じてくれない場合には被害者自らが請求できるようになっています。この制度を利用して後遺症認定の申請を行うことができます。提出するタイミングは医師による症状固定後です。

任意保険の後遺症認定申請

後遺症認定をしてもらう方法は先ほども触れたように、保険会社が申請する事前認定制度があります。保険会社が申請する場合とは、被害者と加害者側の保険会社が示談交渉を行うケースのことを指します。このようなケースでは保険会社が申請書類を含めたすべての手続きを代行するため、被害者は特に何もする必要がありません。事前認定という言葉が使われているのは、症状固定後に障害等級が認定された時点ですぐに保険金が支払えるようにするため、賠償額を計算する必要があるからです。

後遺症認定の申請は症状固定後

後遺症認定を申請するタイミングは自賠責保険、任意保険ともに医師による症状固定が行われてからになります。症状固定と判断されない状態で、被害者側が請求したとしても請求権は認められません。症状固定を先延ばしにしない理由はそこにあります。適切な時期に症状固定をすることで、障害等級に基づく賠償金が確定するのです。

交通事故の後遺症認定と慰謝料

後遺症認定されると慰謝料の支払いに入ります。自賠責保険の被害者請求の場合、自分で慰謝料請求を行いますが、任意保険の事前認定では保険会社が支払いまでの手続きを行います。慰謝料額は後遺障害の等級により異なりますが、請求方法でも慰謝料の金額が変わる事を知っている人はそれほど多くはありません。請求の仕方によって慰謝料が変わるということを聞いて驚く人もいるかもしれませんが、算定する基準によって金額が変わります。

自賠責保険の場合

後遺症認定後、自賠責保険に被害者請求を行う場合、慰謝料の金額はあらかじめ決められているため、増額は期待できません。例えば14等級の場合について考えてみましょう。14等級とは身体の9カ所で障害が認められる場合に適用される等級です。後遺症認定後の障害等級としては最も多くを占めるのが14等級です。14等級の場合、自賠責保険から支払われる慰謝料の総額は32万円です。この額を増やしたり減額されたりすることはありません。

任意保険の場合

任意保険で慰謝料請求をする場合、自賠責保険とは異なります。損害保険会社の示談担当者と交渉を行う場合、任意保険基準という算定基準が適用されます。任意保険基準とは保険会社が定めた算定基準で、自賠責保険がベースにです。そのため補償額はそれほど高くはないのが実情です。先ほどのケースのように14等級と判断された場合の慰謝料額は約40万円ですので、自賠責保険とあまり変わらないことが分かります。

弁護士に依頼する場合

任意保険から支払われる補償額を増やすために弁護士に依頼するとどうなるのでしょうか。障害等級14等級の場合、過去の判例を参考にして弁護士は慰謝料を算定します。過去の判例によれば、慰謝料の平均的な金額は100万円です。任意保険よりも60万円も多い金額ですから、驚くかもしれません。後遺障害認定を受けた場合、それ以降の慰謝料請求を弁護士に任せることにはメリットがあることが分かります。

交通事故の後遺症認定における弁護士の役割

交通事故の後遺症認定は交通事故被害者の人生を左右する可能性があり、決定は慎重に行う必要があります。交通事故の被害に遭ってしまった場合、賠償請求権を持っているのは被害者ですが、加害者側の加入する保険会社のペースで示談交渉が進められるケースが多く、納得がいく結果にならない場合が少なくありません。そのようなときに役に立つのが弁護士です。弁護士は訴訟代理権を持っているので、被害者の代わりに示談交渉を行うことができます。後遺症認定においても弁護士が持つ役割は大きいといえるでしょう。

後遺症認定と弁護士の関係

後遺症認定を行うのは保険会社ですが、保険会社が後遺症認定を行う過程で、被害者の状況を判断する必要が生じます。被害者はこれまでの治療状況を踏まえ、医師から症状固定の判断をもらいます。医師が症状固定の判断をすると、保険会社は事前認定の作業に入ります。この段階で弁護士に依頼するなら、弁護士が事前認定に関与することになるため、保険会社が単独で手続きを進めることはできなくなります。

弁護士介入のメリット

事前認定の段階で弁護士が介入することのメリットとして、提出することになる書類の作成段階で、被害者の状況をより適切な形で表現するよう調整を図ってくれます。なぜこれが良いのかというと、提出する書類の内容により、被害者の障害等級が変わる可能性があるからです。特に14等級かどうかを判断する場合、弁護士の介入があるかないかで、認定されるか否かが大きく変わるといわれています。

後遺症認定を含めた示談交渉は弁護士に

後遺症認定を保険会社に任せきりにしてしまうと、本来得られるはずの慰謝料や逸失利益を得そこなってしまう可能性があります。弁護士は被害者の立場で手続きを進めるため、被害者が有利になるように保険会社との交渉を行います。後遺症認定の段階になる前に弁護士に相談しておくなら、その後の慰謝料請求もスムーズに進むことでしょう。

交通事故の後遺症認定は弁護士に依頼しよう

後遺症認定は被害者の慰謝料や逸失利益といった賠償額に大きな影響を与えます。後遺症認定は保険会社が実施するため、認定作業の段階で後遺症認定されない可能性もあります。例えば交通事故で負傷し、病院での治療をしたものの、医師から完治する見込みがないと判断されたとします。この段階で医師は症状固定を判断するわけですが、その後の後遺症認定の段階で障害等級に該当しないと判断されると、被害者は症状固定後の後遺障害慰謝料や逸失利益に基づく賠償金がもらえなくなってしまいます。そのような状況を回避するため、弁護士に示談交渉を依頼する人が増えています。

なぜ弁護士に依頼するのか

弁護士に依頼することのメリットは、加害者側との交渉を代理でしてもらえることです。弁護士は数多くの訴訟事例や交渉経験を有しているため、後遺症認定の判断についても、被害者に有利に交渉を進めていくための方法を知っています。法律についての知識がなく、示談交渉の経験もほとんどない人が保険会社と交渉する場合と比較すると、後遺症認定の成功率が大幅に上昇します。そのような理由で弁護士に依頼するのです。

書類の内容が大切

後遺症認定をしてもらう場合、成否のカギを握るのが提出する書類です。書類の内容によっては、後遺症認定をしてもらえないことがありますし、本来得られたはずの障害等級に認定されないということも起こりえます。弁護士は書類の提出についても、障害等級が適用されるための書き方をよく知っています。1段階でも高く認定してもらうためにも弁護士の協力が不可欠なのです。

弁護士費用はどうなるのか

後遺症認定における弁護士の役割はとても大きいのですが、心配になるのが弁護士費用です。弁護士を身近に感じる人はそれほど多いとは言えませんから、実際にいくらかかるのかわからず躊躇する人もいるかもしれません。弁護士費用は高額になる可能性が高いため、必要な場合に備えて弁護士費用特約を設定するなどして補償を用意しておくのが最善です。

交通事故の後遺症認定と弁護士費用特約

後遺症認定における保険会社との交渉を弁護士に依頼することで、障害等級を引き上げることができる可能性が高くなります。症状固定が近づいている場合、症状固定後の障害等級認定までの時間が限られるため、できるだけ早く弁護士に依頼して示談を含めた交渉をしてもらうのが最善です。弁護士に依頼することのメリットはわかっているとしても、心配になるのが弁護士費用です。弁護士費用は高額ですし、費用を払ってお願いする必要性があるのだろうかと疑心暗鬼になってしまうかもしれません。そのような場合の備えとして弁護士費用特約があります。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約は、後遺症認定を含め、加害者側が加入する保険会社の示談担当者との示談交渉を弁護士に依頼する場合の費用を補償する特約です。弁護士費用特約を利用出来るのは、記名被保険者もしくは同乗者が被害者の時に限られます。弁護士費用特約は記名被保険者と同乗者以外にも、同居の親族が適用対象になるため、他の車に同乗して事故に遭い、後遺症を負ってしまった場合も適用されます。

弁護士費用特約の補償額

弁護士費用特約の補償額はほとんどの保険会社で最高300万円までに設定されています。中には500万円まで補償を設けているところもあります。弁護士費用特約は実際に弁護士に支払う着手金や成功報酬なども補償してくれます。弁護士を選ぶ際に、最初の相談の段階で弁護士に相談費用を払う必要があるかもしれません。そのような場合の諸費用を補償してくれるものもあります。

弁護士費用特約の保険料

弁護士費用特約の保険料は年間1000円~2000円です。ひと月当たりわずか100円程度ですから決して高くありません。しかも弁護士に依頼する場合の費用をほぼ満額補償してもらえるのですから、契約して損はない特約です。弁護士費用は場合によって100万円を優に超えることもあります。弁護士費用特約を付帯しておけば費用の心配をせずに有利に後遺症認定を進めることができます。

交通事故の後遺症認定後の慰謝料請求

交通事故後の賠償請求権は示談が成立した段階で消滅します。そのため示談交渉を行う場合は、できるだけ慎重にする必要がありますし、示談する際は納得できる形で行うべきです。仮に示談成立後に示談金の金額が少ないと感じたとしても、再度請求することができないからです。交通事故で後遺障害を負った場合、示談はどうなるのでしょうか。後遺障害は症状固定後に障害等級の認定作業が行われます。障害等級が認定され、逸失利益を含め賠償額が確定した段階で示談が成立します。

障害等級認定後の慰謝料請求は可能か

障害等級認定後、症状がさらに重くなり治療費などがさらに必要になる場合があるかもしれません。すでに症状固定の判断があり、障害等級が確定した後については慰謝料請求に関する権利がなくなってしまうため、基本的に請求はできないことになっています。それ故に示談を慎重に行う必要があるわけですが、被害者保護の観点から、一定の条件を満たすことで請求できる場合もあります。その場合は示談の段階で障害がさらに発生した場合は別途協議するといった文言を加えます。

後遺症認定されなかった場合

医師から症状固定の判断を受け、後遺症認定をしてもらうために保険会社に状況を伝えたものの、障害等級がつかないケースもあります。障害等級がつくかどうかで慰謝料を含めた賠償金の金額は大幅に変わってしまいます。ケースバイケースですが50万円以上もの差が生じることもあります。仮にこのようなケースでも、後に交通事故が原因で等級認定された場合は、改めて慰謝料請求ができることがあります。

示談成立後の請求は弁護士に依頼する

示談が成立した後に慰謝料を含め賠償金の再請求を依頼する場合は、弁護士に依頼するのが最善です。まずは弁護士に相談し、請求可能かどうかを確認してから依頼するかどうかを決めましょう。弁護士は被害者にとって有利になるような方法を考え、交渉を進めてくれるので、納得ができる結果が期待できます。

交通事故の後遺症認定と後遺障害診断書

交通事故の後遺症認定作業に、医師による後遺障害診断書の作成があります。交通事故後のケガの治療を続けていると、医師がこれ以上ケガや症状改善の見込みがないと判断する事があります。これを症状固定と呼びます。症状固定が完了すると、保険会社が後遺障害認定を行います。ところで、後遺障害認定作業で必要なのが先ほども述べた後遺障害診断書です。後遺障害診断書は交通事故の被害者が障害等級に該当するかどうかを決める重要な資料になります。

診断書の作成を依頼するタイミング

医師により症状固定と判断されたら、後遺障害診断書を作成してもらえるよう担当の医師に依頼します。話すタイミングはまちまちですが、可能であれば症状固定が決まった段階で伝えると良いでしょう。後遺障害診断書は医師が用意するのではなく、保険会社などが用意している専用の書式を用います。後遺障害診断書を依頼すると、数週間で診断書が完成しますので、受け取った診断書を保険会社に送付します。

診断書の内容が大切

後遺障害診断書の記載内容は、被害者の障害等級を決定する際の重要な資料です。診断書の記載内容一つで等級が大きく変わってしまうことがあり、受け取れる慰謝料の額も変わってきます。仮に障害等級が適用されなくなってしまったとしたら、後遺障害慰謝料や逸失利益に基づく賠償金が受け取れなくなってしまいます。それほど大切なのが診断書の中身です。診断書を受け取ったなら内容をよく確認してください。

診断書の内容に問題がある場合

診断書の記載内容が実際の症状と少し違う場合があります。ケースバイケースですが、自覚症状よりも診断内容のほうが症状が軽いと判断されることもあります。このような場合は、医師と話し合い、適切な内容に調整してもらう必要があります。より適切な内容に調整してもらえるようにするために、弁護士に相談して適切な内容についての提案をもらうこともできるかもしれません。

むち打ちは交通事故の後遺症認定対象になるか

交通事故の後遺症認定で問題になるのがむち打ち症です。むち打ちは他覚症状がないため、後遺症認定をされにくいのが実情です。むち打ちにもさまざまな程度があり、症状が重いものから、軽度なものまであります。自覚症状があり、頭痛やめまいなどの症状を呈する場合もあります。そのような場合でも後遺症認定されない場合もあります。できれば後遺症認定をしてもらい、障害等級が適用されるようにしてもらいたいと思うかもしれませんが、そのようなことは果たして可能なのでしょうか。

障害等級14級の中身を把握する

後遺症認定されると障害等級が適用されます。障害等級は後遺症の程度に応じて1~14等級までに分かれています。最も重いのが1級で軽いのが14級です。むち打ち症は14等級として判断されるかどうかが争点になります。ちなみに14等級は聴力が低下したり、傷跡が残ったりした場合に適用されます。むち打ち症では、局部に神経症状が残るかどうかで後遺症認定の可否が変わります。

神経症状は他覚症状ではない

神経症状は目視で判断できる他覚症状にならないため、判断がどうしても分かれてしまいます。医師による症状固定の判断があっても、後遺症認定の可否を判断するのは保険会社になるため、必ずしも後遺症として認められる訳ではありません。むち打ち症を後遺症認定してもらうには、客観的な判断が求められます。つまり被害者の症状を確認して障害等級に該当するかどうかを判断する必要があるのです。

弁護士に相談して解決する

むち打ち症のような他覚症状のないケガでも後遺症認定をしてもらえるようにするには弁護士の力が必要です。弁護士は他覚症状がないむち打ち症のような障害でも障害等級に相当するかどうかをより適切に判断することができます。保険会社の判断に任せるのではなく弁護士に相談することで、適用される可能性が高くなります。後遺症認定されるかどうかは慰謝料の金額に直結しますから、弁護士に相談するメリットは大きいといえるのです。

交通事故示談金相場と自動車保険

交通事故示談金相場と自動車保険

交通事故には遭いたくないものですが、万一交通事故の被害者になった場合、加害者に対して慰謝料を含む賠償金を請求できる権利が生じます。民法では損害賠償請求権と呼ばれています。民法416条には損害賠償請求権とは損害を填補し、損害を被る前と同じ状態に復旧してもらうことと定義されています。少し難しい表現ですが、簡単に言えば原状回復に関する権利と言い換えられます。ここで問題が生じるのが、精神的な苦痛は目に見えるものではありませんので、「原状回復」できるわけではないという点です。大けがをして後遺障害になってしまった場合についても同様です。もとに戻すことができない以上、どのようにして「原状回復」を行うのでしょうか。

原状回復できないものは金銭で補償する

映画やドラマでは奇跡が起きて身体機能がもとに戻るといった感動的な場面が訪れることがありますが、現実問題としてそのようなことは起こりえません。そのため精神的な苦痛や身体的機能の損傷など文字通りの「原状回復」ができないものについては、金銭で補償する以外に方法がありません。金銭の補償分のことを慰謝料と呼びます。慰謝料だけでなくケガの治療費や物的損害に対する補償や、修復費用をすべてまとめたものを賠償金と呼んでいます。賠償金の確定と被害者と加害者双方が賠償内容に同意し、今後その件に関する一切の損害賠償請求権を放棄することを示談と呼びます。示談が成立した後は基本的によほどの瑕疵が生じない限り、賠償金の再請求はできません。示談の際に支払われる賠償金のことを示談金と呼びますが、示談金には相場があるため、交通事故示談金相場について関心を持つ人が少なくないのです。

交通事故示談金相場とは

交通事故示談金相場は、交通事故後に被害者と加害者双方で示談交渉を行い、示談が整理した時点での賠償金の相場の事を指します。交通事故はすべてのケースが同じ状況で生じるとは限りません。むしろ交通事故の発生状況は千差万別で、被害内容も軽いものから重いものまで多岐に及びます。しかしながらある程度相場がなければ、実際に支払われる賠償金に差異が生じてしまいます。このような状況を回避するために、示談金にはある程度の相場が決まっているのです。示談金相場の決め手となるのが自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準です。示談金を算定する際、それぞれの基準に従って計算するのですが、基準が異なるということは、交通事故後の示談交渉についても相場がかなり分かれることを示唆しています。

自賠責基準とは

自賠責基準というのは自賠責保険の補償額に従って慰謝料を算定する方法です。自賠責保険は法律で加入が義務付けられた強制保険です。そのため自賠責保険の補償額はあらかじめ決まっています。3つの基準の中で最も算定しやすいのが自賠責基準による計算です。自賠責基準で示談金を算定する場合、通院や入院に加え、一日当たりの精神的な慰謝料、休業補償などを加算します。ちなみに自賠責基準で慰謝料を算定する場合、一日当たりの慰謝料は日額4200円です。仮にケガによる通院で治療期間が20日、実際の通院が8日だとすると、治療期間と通院期間を2倍した期間とで比較し、少ない方で計算します。慰謝料の金額は以下のようになります。

8×2=16日 16日×4200円=67200円

任意保険基準と弁護士基準

任意保険基準とは保険会社が定める示談金の計算方法で金額については公開されていません。自賠責保険よりも高く設定されていることは事実ですが、実際に計算してみると示談金はそれほど多くはないのが実情です。そこで弁護士基準を利用します。弁護士基準とは弁護士に依頼する場合に適用される基準のことで、裁判所の判例に基づいて算定します。示談金額が多くなるのは弁護士基準です。もし示談金相場よりも多く慰謝料を受け取りたい場合には、弁護士に交渉を依頼し、弁護士基準を適用してもらうようにしてください。

交通事故示談金相場は一定ではない

交通事故の被害に遇った場合、加害者側との示談交渉が必要です。被害者には損害賠償請求権が認められているので、精神的な苦痛に対する慰謝料を含め適切な金額の示談金を請求したいと思うことでしょう。実際に示談交渉を行う場合に気になるのが適切な額とは一体いくらくらいなのかという点です。交通事故の示談金の相場が分かればいいのにと思うことでしょう。交通事故の示談金相場はあらかじめ決まっているのでしょうか。

自賠責保険であれば相場が分かる

交通事故の示談金相場を確実に把握することができるのは自賠責保険の補償額です。自賠責保険の補償額はあらかじめ決まっているので、被害状況に応じて一律で示談金が支払われます。賠償額が自賠責保険の補償額に収まる場合、相場を把握するのはとても簡単です。精神的な慰謝料は日額4200円と決まっているので、一定の計算式に従って算定することで金額が分かります。

任意保険の相場は一定ではない

任意保険の慰謝料相場はケースにより異なります。自賠責保険とは異なり、保険会社が被害状況に応じて適切な金額を決めるからです。もちろん目安となる補償額はあるのですが、非公開となっているため、私たちが把握することは難しいのが実情です。基本的には自賠責保険をベースに補償額が決められていますが、慰謝料の日額は自賠責保険の補償額よりも高めに設定されています。示談交渉の段階で慰謝料の日額を決定することになるので、実際の交渉時に保険会社が提示する金額を見て判断するしか方法がありません。

弁護士に依頼するメリット

相場が一定ではないという点は、被害者にとってデメリットが多くなってしまいます。事故の状況や交渉次第で金額が変わってしまうからです。被害者が示談金に関する情報をあまり知らなければ、保険会社のペースで話が進められてしまいます。そのような場合、弁護士に依頼することで任意保険の補償額を増額できます。

自賠責基準による交通事故示談金相場

交通事故示談金相場を算定するのに用いられる基準のうち、自賠責保険の補償額に基づいて算定する方法を自賠責基準と呼びます。自賠責保険は強制保険ですから、車を所有していれば加入しなければならず、自賠責保険が切れた状態で自動車を運転した場合、行政上、刑事上の罰則が科せられます。自賠責保険は対人補償のみの保険で、補償額はあらかじめ上限があります。上限を超える分の示談金は任意保険から支払われることになるのです。

自賠責保険の補償額には限度がある

自賠責保険の補償額にはあらかじめ補償限度額が設けられています。補償限度額は次の通りです。

・負傷した場合:120万円

・後遺障害になった場合:4000万円

・死亡した場合:3000万円

補償限度額は治療費や慰謝料を全て含んだ金額です。治療費が限度額を超えた場合、慰謝料は任意保険による再計算となり、示談金の額が変わってきます。ちなみに交通事故で被害者が死亡した場合の補償額には遺族への精神的な慰謝料は含まれていません。

自賠責保険の慰謝料

自賠責保険で設定されている慰謝料は2種類に分かれています。ケガの治療のために通院したり入院したりした場合に支払われる慰謝料(入通院慰謝料)、後遺障害を負った場合に支払われる慰謝料(後遺障害慰謝料)に分かれます。それぞれ慰謝料の金額は決まっているため、計算する際はあらかじめ定められた計算式に従って算定します。算定方法は比較的簡単で、保険に詳しくない人でも行えます。

示談金の計算方法

自賠責基準による示談金の計算方法は、治療費や治療にかかった諸費用、休業補償、精神的慰謝料を足して求めます。治療費や治療にかかった費用は実費で計算します。休業補償は一日当たりの報酬を計算しますが、上限は19000円です。精神的慰謝料は実際の通院日数を2倍したものと、治療期間を比較して短い方を適用します。例えば治療期間が20日間で実際の通院日数が8日の場合、実際の通院日数を2倍したほうが少なくなるため、16×4200=67200円が慰謝料になります。

任意保険基準による交通事故示談金相場

交通事故の示談金の算定方法に任意保険基準があります。任意保険基準とは、自動車保険を販売する損害保険会社が示談金を計算する際に用いる基準のことです。任意保険の位置づけは自賠責保険の上乗せ補償ですから、自賠責保険の補償額を上回る示談金については任意保険で補償することになります。自賠責保険の補償額に従って算定する自賠責保険基準と異なる点は、基準額が公開されていないという点です。つまり一般の人が任意保険基準に従って示談金を計算する事は難しいでしょう。

任意保険基準の中身

任意保険基準の補償額は公開されていないため、過去に支払われた慰謝料や示談金の額から基準額を求める事になります。基本的に任意保険は自賠責保険の上乗せ保険であり、補償額は自賠責保険とは異なっているため、示談金は自賠責基準よりも多くなると考えられがちです。非公開となっているのは、保険会社の自衛策でもあります。保険会社は民間企業ですから、利益を確保するためにできるだけ補償を少なくしたいという思惑があるのです。

自賠責保険の補償額に準じる

任意保険基準の補償額は自賠責保険の補償額に準ずるものとなっています。このことは任意保険基準を適用した場合、被害者の希望に合わせて無制限で慰謝料を含む示談金の請求ができるわけではないことを示しています。無制限と定められているのは、あらゆる事例に対応できるようにするためであり、実際に支払われる示談金の上限がないという意味ではないことを覚えておいてください。

自賠責基準と同じというわけではない

補償額が自賠責保険に準じるといわれているものの、自賠責保険と補償額が同額という意味ではありません。任意保険基準は自賠責基準を上回る補償額が設定されますが、大幅に上回るものではありません。保険会社がすべての事例で保険金を無制限で支払ったとしたら経営できなくなるからです。示談交渉の過程で保険会社側が提示した示談金の額がそれほど多くないと感じる理由はそこにあります。

弁護士基準による交通事故示談金相場

交通事故示談金相場の算定基準は自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つです。このうち、示談金計算で明確な基準を定めているのが自賠責基準です。自賠責保険は加入が法律で定められているため、自賠責保険を契約せずに公道を走行した場合、重い罰則が科せられます。自賠責保険の補償額を上回る金額を定めているのが任意保険です。任意保険に加入した人の多くは対人無制限の補償を契約しています。これは交通事故で被害に遇った場合、慰謝料を含めた賠償額を上限なしに請求できるというわけではありません。任意保険基準により賠償金額を算定すると示談金の額が少ないと感じることもあります。そのような場合に考えたいのが弁護士基準の適用です。

弁護士基準とは

弁護士基準は、慰謝料を含め示談金を請求する際に、過去の裁判所の判例に基づいて弁護士が定めた算定基準の事を指します。東京弁護士会が作成した資料に基づいて算定基準が定められますが、補償額は裁判所での判断に基づいているため、任意保険基準よりも高くなっているのが特徴です。

弁護士基準を適用するには

弁護士基準は、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。保険会社の担当者に対して被害者が直接弁護士基準を適用してほしいといったとしても、受け入れてもらえないので注意してください。弁護士基準が適用されるには、弁護士を通じて保険会社に弁護士基準の適用に関する信書を送付し保険会社の同意を得る必要があります。弁護士が送付する場合、保険会社はほぼ間違いなく弁護士基準を適用するので、満足できる補償額になる可能性が高くなります。

弁護士費用がかかる

弁護士基準を適用してもらうためには、弁護士に依頼しなければならないので、弁護士費用が発生します。弁護士費用には着手金と成功報酬などが含まれますが、高額になるケースが少なくありません。そのような場合に備えて弁護士費用特約を付帯しておくことをお勧めします。

交通事故示談金相場が低いと思える理由

交通事故に遭ってしまった場合、ケガの治療だけでなく精神的なショックから立ち直る必要があります。もちろん交通事故が起きる前の状況にタイムスリップできるわけではないため、完全な意味で立ち直るというのは難しいかもしれません。そのような状況では精神的な苦痛を含め、一定の補償が必要になります。それが慰謝料です。慰謝料と示談金は同じと思っている人が時折いますが、慰謝料と示談金は異なります。慰謝料とは精神的な苦痛に対する賠償のことで、示談金はケガの治療費や仕事の休業補償、慰謝料を全て加算した総額のことを指すからです。示談交渉で示談金が提示されますが、金額に満足できないケースが少なくありません。なぜなのでしょうか。

示談金の額を決めるのは保険会社

示談金額に満足できない理由は、示談金額を決めるのが保険会社だからです。示談交渉は加害者側の保険会社の担当者と、被害者双方の話し合いになります。保険会社の示談担当者はプロですから、保険会社側に有利になる示談交渉を持っていこうとします。保険会社としては、示談金をなるべく少なくしたいと考えるので、提示金額が少ないと感じてしまう人が多いのです。

被害者の事情は考慮されるのか

示談交渉の過程で、被害者の気持ちや希望が尊重されるべきなのは言うまでもありません。交渉の過程で相手側の示談担当者も被害者の事情を考慮しながら交渉を進めていきます。だからと言って被害者の希望を満額で受け入れるわけではなく、いわゆる落としどころを探ろうとします。

示談金額が少ない場合の対処法

交通事故示談金相場が少ないと感じる場合、被害者側にできることは弁護士基準を適用させることです。過去の判例に基づいて示談金を算定するため示談金の額が一気に上がります。この基準を適用させるためには弁護士に依頼する必要があります。弁護士に依頼する場合、費用が発生するため、示談金の額と弁護士費用との差額をチェックして決めると良いでしょう。

交通事故示談金相場は上昇している?

交通事故示談金相場が上昇しているというのは本当なのでしょうか。これまでの判例を見てみると、交通事故の賠償金額は年々高額化しているため、相場もそれに合わせて上昇しています。なぜ交通事故示談金相場は上昇しているのでしょうか。その理由の一つに、裁判により加害者側と争う人が増えていることが挙げられます。これまで示談交渉といえば、加害者と被害者双方が契約する自動車保険の担当者同士による交渉が一般的でした。その後法律に関するテレビ番組が増加し、訴訟に持ち込むことがそれほど大変なことではないことに気付いた人が増えてきました。これがその理由です。

示談金相場と逸失利益

交通事故示談金相場を算定する場合に考慮するのが被害者の逸失利益です。逸失利益というのは加害者が交通事故の被害に遭わず健康だった時に得られたであろう経済的な利益のことを指します。逸失利益は被害者の年齢や職業によって異なります。近年特に増えているのが医師や弁護士が事故に巻き込まれるケースです。報酬が高額ということもあり、示談金相場が上昇しています。中には3億を超える賠償金が確定したという事例もあります。

示談金相場よりも賠償額が少ない事例も

交通事故示談金相場が上昇しているというものの、実際に提示される賠償金の額を見てあまりにも少ないと感じる人もいます。これは被害者の職業や年齢が関係しているのですが、示談交渉の過程の際に逸失利益が低く見積もられてしまうことに起因しています。保険会社と被害者が直接交渉をする場合にこのような事態がよく見られます。

示談金相場を引き上げるには

示談金相場を上げるためには逸失利益を高く見積もってもらう必要があります。そのためには被害者が直接交渉するのではなく、弁護士に依頼することが大切です。弁護士に依頼するのは高くつくと思っている人がいるかもしれませんが、弁護士費用特約を付帯しておけば費用が補償されるので負担はほとんど発生しません。

交通事故示談金相場と弁護士費用特約

交通事故示談金相場を引き上げるのに役立つのが弁護士費用特約です。弁護士費用特約は自動車保険(任意保険)に付帯できる特約で、交通事故時の示談交渉を弁護士に依頼する際の費用を補償する特約です。弁護士費用特約の登場により、交通事故示談金相場は上昇するようになりました。まだ弁護士費用特約を付帯していないという人も少なくありませんが、この特約はコストパフォーマンスが高く、付帯する価値が非常に高い特徴があります。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約で補償されるのは、交通事故の被害者になり、保険会社による示談交渉サービスが利用できないときに、弁護士に示談交渉を依頼する費用です。保険会社による示談交渉サービスが利用出来ないケースとは加害者側の過失割合が10割の事故で追突事故などが含まれます。加害者の過失割合が10割ではない場合はどうなるのかというと、9割や8割のケースでも特約の補償を利用できるケースがあります。前もって保険会社に確認すると良いでしょう。

弁護士費用特約の補償額

弁護士費用特約の補償額は最高300万円~500万円です。最近では弁護士費用のほかに文書料や相談費用を別途補償してくれるものあります。補償額は30万円までというのが相場です。実際に弁護士への依頼費用は着手金+成功報酬となりますが、着手金は20万円前後、成功報酬は賠償額全体の10%程度ですので、特約の補償で十分カバーできます。

弁護士費用特約の保険料

弁護士費用特約の保険料は高くはありません。年間の保険料は1000円~2000円のところがほとんどで、ひと月当たりわずか100円前後です。しかもこの特約を利用した場合、等級ダウン事故としてカウントされないので、自動車保険の保険料が上がる心配もありません。1カ月100円程度で数百万円もの補償が得られることを考えると、弁護士費用特約のコストパフォーマンスは非常に高いことが分かります。

交通事故示談金相場は弁護士依頼で格段に上がる

インターネット上の情報をチェックしていると、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼することのメリットに関する情報が多くみられることが分かります。弁護士に依頼することが身近になった理由は、自動車保険に弁護士費用特約を付帯できるようになったことと、弁護士が出演するテレビ番組が増えたことが関係しています。実際に弁護士に示談交渉を依頼する場合、本当に交通事故示談金相場を引き上げることができるのでしょうか。

弁護士に依頼する価値

弁護士に示談交渉を依頼することの最大のメリットは、弁護士基準と呼ばれる示談金算定基準を適用できることです。弁護士基準は過去の判例に基づいて策定された算定基準で、自賠責保険や任意保険の算定基準をはるかに上回ります。例えばケガをして30日間入通院をした場合、自賠責保険から受け取れる慰謝料の金額は約12万円ですが、弁護士基準による算定方法では30万円にもアップします。この違いを見るだけでも、弁護士に依頼する価値が高いことがわかることでしょう。

弁護士に依頼する場合の費用

弁護士基準を適用させることで、慰謝料を含む示談金の額はアップしますが、それと同時に弁護士に対して報酬を支払う必要が生じます。弁護士に支払う費用は最初に必ず支払う着手金と、慰謝料を含めた賠償金の額が増額できた場合に支払う成功報酬に分かれています。仮に示談金の額が300万円になった場合、弁護士に支払うのは着手金+成功報酬+文書代などです。着手金は20万円程度、成功報酬は増額分の10%が相場なので、このケースでは弁護士費用が50万円~60万円かかる計算になります。

弁護士費用特約でカバーする

数十万円もの費用を支払うのは大変だと感じることでしょう。そのような場合の備えとして弁護士費用特約を付帯しておくことが大切です。弁護士費用特約の保険料は年間でわずか1000円~2000円程度ですので、さほど大きな負担ではないでしょう。

交通事故の慰謝料を弁護士に依頼した場合

交通事故の慰謝料を弁護士に依頼した場合

一番のメリットはどこ?

交通事故に遭った後、慰謝料請求について悩んでいる方は多いでしょう。特に多いのが『弁護士に依頼すべきか』ということです。結論からいいますと、確実に弁護士に依頼したほうが良いでしょう。というのも、弁護士に依頼することでさまざまなメリットがあるからです。そのなかで一番のメリットになるのが”慰謝料の増額”になります。

交通事故による慰謝料は3つ。傷害慰謝料と後遺障害慰謝料、そして死亡慰謝料です。それぞれ請求するには条件を満たす必要があり、交通事故の状況によって選択できる慰謝料が異なります。傷害慰謝料は、事故による怪我で治療を受けた場合の入通院の支払いです。どれくらいの費用を受け取ることができるかは入通院の期間によって変わります。また『治療期間』か『実治療日数』かどちらを基準にするかによっても算定額が変わってくるでしょう。後遺障害慰謝料は、事故による怪我で後遺障害が認定された場合に支払われる慰謝料です。後遺症と後遺障害は似て非なるもので、後遺障害は後遺症の種類になります。第1級~第14級まであり、状況によって等級が認定されます。後遺障害の認定は4つの条件をすべて満たす必要があります。死亡慰謝料は、被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料です。扶養家族やどれくらいの過失かによって増額される場合があります。

依頼するタイミング

基本的に、依頼は早いほど良いといわれています。しかし急いで早く進めても、良い結果にはならないのも事実。被害者にとってどのタイミングが依頼にベストなのか知っておくと、万が一交通事故に遭ってしまった場合でも安心でしょう。

まず、弁護士に依頼すると示談交渉から進めていくことになります。一般的に個人で示談交渉を行うと、最低でも半年はかかるといわれています。しかし弁護士に依頼すると、最短1カ月程度。非常に短い期間で示談交渉まで進めることができるようになります。ちなみに、示談交渉は事故直後からでも可能です。物損事故の場合でも、両者に大きな問題がない限りすぐに示談開始が可能になります。ただし人身事故や傷害事故の場合は、示談を急いでしまうと損害賠償金の請求ができなくなる可能性があるので注意しなければいけません。そして後遺障害が残った場合は、治療が優先になります。必ず症状固定するまで示談交渉はしないようにしてください。症状固定までは事故から約6カ月前後といわれています。

依頼後の解決までの期間

弁護士に依頼すると、解決までの期間が短縮されます。しかし、『示談交渉のみ』と『訴訟を行う』場合とでは解決までの期間が異なります。前者の場合、1~2カ月程度。どの段階で弁護士に依頼するかによって違ってきますが、すでに加害者側の保険会社から示談交渉が行われている場合、約2週間程度と短くなりますので、最短1~2か月で解決するといわれています。一方で訴訟まで行った場合、半年~1年程度が目安です。裁判所へ法的手続きが必要になるため、ある程度時間を費やすことになってしまいます。また後遺障害を認定した場合、症状固定までの期間と等級の申請が終わるまでの期間、等級の認定が下るまでの期間を合わせて約8カ月程度になります。

自分に合った弁護士の見つけ方

ただ弁護士に依頼するだけでは、必ずしも自分にとってメリットになるとは限りません。ですから、少しでも自分に合った弁護士を見つけるために、いくつかのポイントをチェックしてみましょう。

まず、過去にどれくらいの交通事故事件を取り扱ったかです。弁護士によって得意不得意は異なります。たとえば、債務整理に強い弁護士に交通事故の慰謝料に関して依頼しても、スムーズに解決できないかもしれません。ですから、弁護士事務所の公式サイトなどでどんな事件を主に解決しているか確認してみましょう。そして、分かりやすく丁寧な説明、訴訟経験があることも重要になります。

弁護士への依頼を検討している方は、ぜひこれらをチェックしてみてください。

交通事故の慰謝料は弁護士に相談したほうが良い?

慰謝料の増額が可能

交通事故の慰謝料を弁護士に相談したほうが良い一番の理由は、”慰謝料の増額が望めること”がもっとも大きいでしょう。交通事故の慰謝料は3つに分類されます。1つ目は、『傷害慰謝料』です。入通院慰謝料とも呼ばれており、交通事故によって病院での治療が必要になった場合で、入通院をすると支払われます。費用は、入通院の期間によって異なります。自賠責保険の場合、法律で決まっています。2つ目は、『後遺障害慰謝料』です。後遺症慰謝料とも呼ばれており、その名のとおり交通事故によって後遺障害が現れた場合、それを認められると支払われます。ただし、後遺症があるというだけでは支払われませんので注意してください。後遺障害は、後遺症に等級付けを行ったものをいいます。

・将来的な回復が見込めない。

・交通事故による明確な原因がある。

・医学的にも明確に後遺症が認められている。

・自賠法施行令の等級に該当している。

これらの条件に当てはまる方は、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。3つ目は『死亡慰謝料』です。交通事故によって被害者が亡くなってしまった場合に支払われます。被害者の扶養家族が多い場合、重度の過失だった場合は慰謝料が増額されることになります。

示談交渉がスムーズになる

弁護士に依頼することで、示談交渉がスムーズに進むのも大きなメリットになるでしょう。示談交渉は、一度成立してしまうと再度請求することはできません。このとき、いかに必要なことを主張できるかは、依頼する弁護士によって異なります。示談交渉が上手くいかない場合、交通事故による精神的苦痛に対する相応の金額を支払ってもらうことができません。結果、損してしまうことになります。それを避けるためにも、専門的知識のある弁護士に依頼するのがベストでしょう。

心身の負担を軽減できる

専門的知識がある弁護士に相談することで、問題の解決がスムーズに進みます。これは、心身の負担を軽減してくれることになります。弁護士は被害者の交渉をすべて行ってくれますから、問題に対する悩み、対応に費やす時間も減らすことができます。

交通事故による慰謝料にかかる費用

障害慰謝料について

入通院慰謝料とも呼ばれており、交通事故の怪我によって入通院をした場合に支払われます。費用は、自賠責保険を利用することができますが、入通院にかかった期間で決まるため金額は増減します。そのため、3か月通院のみに支払われる金額と、入院1カ月・通院3か月で支払われる金額は当然違います。ちなみに、自賠責基準と裁判所基準でも金額は異なります。

任意保険の場合は明確な金額の基準がありませんが、自賠責保険の1日あたりの費用を基準にすると良いでしょう。

後遺障害慰謝料について

交通事故が原因で後遺障害が認められた場合に支払われます。後遺症と後遺障害は症状が異なるため、ただ後遺症があるだけでは慰謝料の支払いはありません。後遺障害というのは、後遺症によって等級が付けられた場合です。そのため、どんなに痛みが残っていても、等級が付けられない場合は後遺障害慰謝料の対象外になりますので気をつけてください。

後遺障害の認定は一般的に4つの条件があり、これらをクリアする必要があります。1.症状固定(将来的な回復が見込めない)、2.交通事故が原因であるという明確な証拠がある、3.医学的にも明確な後遺症が認められている、4.自賠法施行令の等級に該当。万が一申請が通らなかった場合、訴訟手続きによって支払ってもらうこともできます。しかし相当な時間を費やすことになり、専門的知識も必要になります。弁護士のサポートは必須といえるでしょう。

死亡慰謝料について

被害者が死亡してしまった場合、死亡慰謝料が支払われます。どれだけの金額が支払われるかは、扶養家族や相手の状態によって異なります。また被害者の立場によっても違ってくるでしょう。たとえば、一家の支柱や子供、高齢者などです。もちろん配偶者であった場合でもきちんと支払われます。

ちなみに、扶養家族が多い場合や重度の過失、無免許運転・飲酒運転・ひき逃げなどによる交通事故は慰謝料が増額される場合があります。

交通事故での弁護士に依頼するタイミング

示談交渉と訴訟の場合

交通事故の問題を弁護士に依頼する場合、示談交渉のみと訴訟まで行った場合とでは解決までの日数が異なります。示談交渉のみの場合、1~2か月程度。もちろん、どんな弁護士に依頼するかによって前後します。交通事故問題に強い弁護士であれば、目安の期間で解決することが多いでしょう。また、現在どの段階まで進んでいるかによっても、示談交渉から解決までかかる期間が異なります。たとえば、すでに加害者の保険会社で示談交渉がある場合、示談交渉のみで進めると最短2週間程度で示談交渉が行われます。解決までは、先ほど述べたとおり1~2か月程度。あくまで目安ですが、比較的早い段階で解決できるでしょう。

一方で訴訟まで行った場合、最短半年。長くても1年程度になります。訴訟は、示談交渉が成立しない場合に行われます。ですから、示談交渉のみで成立すれば訴訟は省略されます。

交通事故による怪我の度合いでも異なる

たとえば後遺障害の認定を受けた場合、解決までかかる期間は8カ月程度。症状固定・後遺障害等級の申請・後遺障害等級の認定それぞれにある程度の期間が必要になるため、総期間が8カ月程度になるわけです。症状固定まで6カ月程度。それまでは弁護士に依頼するのは避けたほうが良いでしょう。保険会社によっては6カ月になる前に症状固定を指示される場合もありますが、判断は医師が行いますので安易に従わなくてOKです。

申請が終わるまでの期間は1カ月程度。加害者の保険会社による『事前認定』で後遺障害等級が認められないことを避けるためにも、きちんと弁護士に相談しましょう。等級が認められるまでの期間は40日程度。ただし重傷度が高い場合、さらにかかることもあります。

どんな弁護士に依頼するべきか

これらの期間を参考に、弁護士に依頼しましょう。依頼は、早ければ早いほど良いといわれています。示談交渉や訴訟などにかかる期間が異なってきますので、当然依頼が遅くなればなるほど解決まで時間がかかります。それを避けるためにも、早い依頼をオススメします。

交通事故に強い弁護士とは?

交通事故事件の取り扱い件数

交通事故問題は、ただ弁護士に依頼すれば良いというわけではありません。少しでも安心して問題を解決してもらうためには、”どれくらいの交通事故件数を取り扱っているか”ということです。要するに交通事故問題の経験がいかに豊富かによって示談交渉がスムーズに進みます。『弁護士に依頼したのに失敗した』という方は、交通事故問題に弱い弁護士だったのかもしれません。そこもしっかり理解して依頼すると問題解決までスムーズに進むでしょう。

ですから、まず交通事故の事件を過去にどれくらい扱ってきたかチェックしてください。最近は過去依頼を受けた案件を公式ホームページに掲載している弁護士が増えています。そのなかに交通事故事件はどれくらいありますか?弁護士としての経験も重要ですが、依頼したい事件の実績が非常に重要になります。

説明は分かりやすく丁寧か

もちろん、交通事故の問題をたくさん解決してきても、説明が分かりにくい場合や不親切な場合は避けたほうが無難です。ほとんどの場合、交通事故問題に多く携わった弁護士は分かりやすく丁寧な説明をしてくれますが、それでもやはりきちんとチェックしておきたいところ。特に後遺症と後遺障害に関しては状態によって慰謝料の有無も異なってきますから、説明が分かりにくいとトラブルになり兼ねません。自分が納得するまで親身になって相談に乗ってくれる弁護士は安心でしょう。

訴訟経験の有無

示談交渉だけではなかなか解決しないのが交通事故問題です。ですから、訴訟経験の有無やどれくらいの経験があるかも重要になるでしょう。交通事故の慰謝料はさまざまな手段があるからこそ、それぞれの経験は必要不可欠です。専門知識や経験が豊富な弁護士ほど安心して依頼できますから、事前に確認しておきましょう。適切な判断ができない弁護士に依頼してしまうと、間違った慰謝料を支払われる可能性があります。慰謝料は、弁護士の判断によっても金額に差が出ますから、十分注意してください。

交通事故の慰謝料は引き上げることができる?

過失割合を下げるには?

交通事故の慰謝料は引き上げることができるのは知っていますか?いくつか方法がありますが、そのなかで特に重要になるのが『過失割合』です。過失割合を下げることで、慰謝料を少しでも多く受け取ることができるようになります。過失割合とは、交通事故に対する不注意や過失を意味します。双方に過失があった場合の交通事故は話し合いにて過失割合が決定しますが、相手が一方的に悪い場合の事故は相手の保健会社から過失を下げることができるようになっています。

一般的に、被害者側の過失は保険会社によって高く提示されます。これに対し反論することで過失割合を下げてもらうことができますが、それ以上に下げることは十分可能です。保険会社が提示した通りの過失割合のままでは当然慰謝料は低いままですので、少しでも引き上げてもらうためにはやはり主張するしかありません。

車の修理費用を持つ

車の修理費用を持つだけでは、慰謝料の引き上げはできません。ここでもやはり『過失割合』がポイントになります。修理費用を持つことで過失割合を10対0にしてもらうと、慰謝料がプラスになるといわれています。保険会社は物損事故の修繕費用を支払うことになりますが、この費用には自賠責保険の担保が含まれていません。ということは支出が発生してしまいます。その支出を減らすために、被害者が物損事故の修繕費用を支払うことで過失割合を下げることができます。過失割合が高いと当然慰謝料に影響しますから、支払ってもらえる金額はマイナスになってしまうでしょう。ですから、まずは過失割合を0にするために保険会社が支払う費用を持つことを検討してみてください。

各認定を受ける

各認定とは、後遺障害の等級と逸失利益です。後遺障害の等級は、慰謝料に大きく影響します。等級は1級~14級まであり、低いほど支払われる金額は高くなります。さらに、逸失利益の認定も受けることができれば高確率で慰謝料を引き上げることができるでしょう。

交通事故、弁護士に依頼する費用について

費用は弁護士が決めている?

弁護士費用は、弁護士によって決まっているのは知っていますか?そのため、弁護士事務所によって費用設定額が異なります。もちろん費用の基準はありますが、基本的に依頼する弁護士によって費用が高いところと低いところがあります。そこをきちんと理解しておかなければ、弁護士選びで失敗してしまうでしょう。

弁護士は、日本弁護士連合会に属しており、最低限の規則があります。ですから、たとえ費用が高いところがあっても、規則の範囲内であれば問題ないのです。また平成16年4月1日から報酬額の設定が自由になっています。これにより、ますます費用が高い弁護士事務所が増えているのでしょう。とはいえ、儲けのためや無条件で報酬を高くすることはできません。

相場を比較しよう

費用が高いところと低いところがあるのは事実ですが、各弁護士の費用を比較しておくと安心です。一般的に、弁護士に依頼してかかる費用は『相談料』『着手金』『報酬金』になります。相談料や裁判の着手金は無料のところもあり、少しでも費用を抑えたい方は、ここをチェックしておくと安心です。またこれらの費用は、示談交渉や裁判、後遺障害などによって異なります。

ちなみに相談料に関しては、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準をそのまま利用している場合、無料にはなりません。しかし基本的に1時間1万円までですので、それ以上を超える設定は高いといえます。近年は相談料無料のところが多く、やはり相談料はかからないところのほうが利用しやすいでしょう。

弁護士費用を安く抑える方法

少しでも弁護士費用を安くするためには、やはり先にも述べたように”相談料が無料”のところが妥当になります。費用の特約を利用するのもOK。このサービスは任意保険のオプションで、賢く利用すれば弁護士費用の削減にも役立ちます。もちろん、任意保険に加入していない方は利用できませんので注意してください。

また、居住地から近い場所にある弁護士事務所を利用するのも費用を安く抑えることができるでしょう。遠方ですと、交通費や日当だけで高くなってしまう恐れがあるからです。

交通事故が解決するまでの流れを知ろう

治療・通院・症状固定

交通事故が発生すると、『警察への届け出』『警察による実況見分』で今後どのように問題解決していくかが決まります。そのため、交通事故が発生したからといってすぐに示談交渉や物損事故としての届け出を出すのは避けたほうが良いでしょう。冒頭で述べている『警察への届け出』は、”人身事故”としての届け出です。

警察への届け出や実況見分が終わると、治療・通院・症状固定になります。たとえ自覚症状が出ていなくても、きちんと病院で治療を受け診断結果を出してもらうことが大切です。万が一後遺障害があった場合は、きちんと認定を受けなければいけません。また、治療では必ず健康保険を使用してください。病院によってはあまり良く思わないところもありますが、健康保険は交通事故でもきちんと適用してもらえますから、必ず提示しましょう。

症状固定とは、将来的に見て回復が見込めない場合を意味します。症状固定になると治療の意味がないと判断されますから、請求が難しくなってしまいます。ですから、治療費を請求するなら症状固定までに行いましょう。また保険会社が症状固定を提示してきても安易に応じないようにしてください。

後遺障害の認定

症状固定後の症状は後遺障害になります。損害賠償の請求が可能です。『後遺症による過失利益』『後遺症慰謝料』の2種類あり、過失利益が多いほど賠償金額は高くなります。

後遺障害の認定を受けるには、事前認定と被疑者請求の方法があります。事前認定は保険会社が手続きを行い、被害者請求は被害者側が手続きを行います。当然手間がかかるのは後者です。しかし納得のいく等級認定を受けることができますので、なるべく被害者側が手続きを行うようにしましょう。

示談交渉へ

等級認定が終われば、示談交渉に進みます。示談交渉は、交通事故問題に強い弁護士に相談するのがもっとも適切な賠償金を支払ってもらうことができます。場合によっては2~3倍増額されることもありますから、多少費用はかかりますが、専門家に相談したほうが安心です。

交通事故の示談交渉を裁判でする

交通事故の示談交渉を裁判でする

交通事故後に被害者側と加害者側とで行うのが損害賠償に関する話し合いです。この話し合いのことを示談交渉と呼びますが、示談交渉はスムーズに進まない場合があります。加害者が任意保険に入っている場合、被害者との示談交渉は保険会社の担当者が行いますが、加害者側が提示する慰謝料を含めた賠償金の額に納得できない場合、交渉が難航します。示談交渉が難航してしまうと、双方にとって不利益になるため、裁判に持ち込んで解決を目指すようになります。裁判に持ち込んだ場合、すぐに争うことになるわけではなく、お互いが納得できる解決策を提示し、問題を解決する調停が行われるのが一般的です。

調停とは

裁判の前に行われる調停とは訴訟と異なり、主に紛争の解決を目指す目的があります。調停のメリットは加害者と被害者が納得できる方法で合意に至るため、問題の解決後にしこりが残りにくくなります。いわば円満解決を目指すのが調停です。交通事故後の示談交渉は民事的な分野になるため、裁判所に持ち込む場合は民事調停と呼ばれる方法で解決を目指します。当事者同士が話し合い、問題をどうしたら解決できるかを考えるため、裁判の前段階として選択の余地がある制度です。調停に持ち込まず裁判で争うことも可能ですが、裁判の場合は敵対的な状況で裁判官が採決を下す方法を取るため、後になって弊害が生じる可能性があります。もちろん調停で解決できない場合には訴訟に踏み切るわけですが、訴訟をすぐに行うわけではないので、双方ともにある程度の心の余裕があります。

調停はどこで行うか

交通事故などの民事調停は簡易裁判所で扱われます。簡易裁判所では調停に関するアドバイスを提供していますので、示談交渉がうまくいかない場合に利用できます。裁判となるとややこしいと感じたり、裁判がうまくいかない場合のリスクを考えて不安を感じたりするものですが、調停はプライバシーを保ち、全て非公開で行われるため、加害者、被害者双方にとって心理的な負担が軽くなります。うまく調停を利用することで交通事故後の賠償請求問題での円満解決を目指せます。

調停の効力

調停で双方が合意すると、調停が成立することになります。簡易裁判所での民事調停で合意が締結されると加害者、被害者双方はその合意を確実に守る義務が生じます。効力は裁判の判決と同じですので、加害者は損害賠償を必ず行なわなければなりませんし、被害者は加害者が支払う賠償金に対して異議を申し立てることができなくなります。言い換えれば調停が成立すればその後は問題を掘り起こすことができなくなります。

裁判になるケース

調停が成立しない場合、被害者は賠償請求権を行使して裁判にかけることになります。裁判は調停とは異なり、裁判官が加害者、被害者双方の言い分を聞きながら決定を下します。裁判となると、一般的な示談交渉や調停よりも慰謝料が多くなる場合があるので、敢えて裁判に持ち込もうとする人もいます。テレビ番組では法律関連のバラエティ番組が繰り返し放送されているため、裁判をより身近に感じるようになったという人が増えています。そのような影響もあり、交通事故の賠償金請求についても裁判で争うケースがあります。

裁判のメリット

裁判を起こすことのメリットは、裁判で勝訴した場合、賠償金が増える可能性があるという点です。保険会社が提示する賠償金よりもはるかに多い賠償金が認められる可能性があります。しかも裁判で下される判決の効力は強力なので、加害者は判決で決まったことを守る必要があります。被害者にとってメリットが大きいのが裁判です。

裁判のデメリット

裁判で争う場合、デメリットがあることも覚えておくと良いでしょう。例えば被害者自身が訴訟を起こした場合、裁判では不利になる可能性が高くなるという点があります。これは被害者が弁護士を付けずに争う場合のことを指しますが、弁護士が不在の状況ではかなり不利になるため、敗訴の可能性もあります。

交通事故の示談交渉を裁判でする際に弁護士に依頼すべき理由

交通事故の示談交渉が行き詰まったときの次なる手段として裁判があります。交通事故の示談交渉は民事事件として扱われるため、被害者が加害者を提訴する場合は民事裁判として扱われます。民事裁判を起こす場合、法律上は被害者自身が起こすことになりますが、必ずしも被害者自らが起こすというよりは弁護士に依頼して訴訟を起こす方が一般的かもしれません。なぜ弁護士に依頼して訴訟を起こす方が良いのでしょうか。

調停なら自分でも可能

簡易裁判所では調停と呼ばれる方法が利用できます。調停とは被害者と加害者双方が第三者を間に挟み互いに意見を交わしながら解決を目指す方法を指します。調停が成立すると、裁判の判決と同様の効力を持つようになるので、双方が調停内容を遵守する必要があります。調停は弁護士を付けなくても自分で比較的簡単に行えるので、一般の人がよく利用する手段となっています。

裁判は被害者単独でも起こせる

日本は法治国家ですから、法律に基づいて裁判を起こす権利が補償されています。これは被害者が弁護士を付けないで単独で訴訟を起こすことができるという意味も含まれます。仮に被害者自身が弁護士などの法律家で法律について精通しているのであれば、自分で訴訟を行なって争うことも可能です。なぜ法律家なら、という点を述べたのかというと、法律に詳しくない一般の人が単独で訴訟を起こした場合、訴訟手続きを含め作業が複雑なのでなかなかうまくいかないのが実情だからです。

弁護士を付けたほうが良い

訴訟を起こす場合、一連の手続きだけでなく、裁判を有利に進めるためにも弁護士を付けたほうが良いでしょう。仮に加害者側が加入している保険会社と争うのであれば、加害者側は優秀な弁護士を付けて訴訟に臨みます。そうなると圧倒的に加害者が有利になってしまいます。そうならないためには弁護士に依頼して、訴訟を有利に進めることが大切です。弁護士費用特約を付帯しておけば弁護士費用をカバーできるので費用面での心配がありません。

交通事故の裁判の進め方

交通事故の示談交渉が暗礁に乗り上げてしまい、裁判で争うことになった場合、必要な手順を踏む必要があります。弁護士に依頼する場合には、弁護士が訴訟に関連する手続きを行なってくれますが、自分で訴訟をする場合は、全て自分で準備しないといけません。どちらにしても訴訟の流れは同じですので、仮に裁判で争うことになる場合に備えて、予備知識を得ておくことをおすすめします。

訴訟内容を整理する

まず行う必要があるのが訴訟内容の整理です。どのような経緯を経て訴訟に至ったのか、なぜ訴訟に踏み込む必要が生じたのかといった点をまとめておくことが大切です。訴訟の際には状況証拠や物的証拠などの証拠品が求められます。証拠がなければ裁判を有利に争えなくなってしまうので、裁判で争うことになる点を証明するための証拠づくりをしておくことが大切です。被害者側が有利に訴訟を進めていくためには、映像や物的証拠に加えて目撃者による状況証拠も集めておきます。

訴状を作成する

訴訟内容を整理して、証拠となる物品や状況証拠が整ったのであれば、次は訴状を作成する段階に入ります。訴状にはなぜ裁判で争うのかを明確に記す必要があります。弁護士に依頼する場合、訴状はすべて弁護士が準備することになるので、書式などを覚える必要はありませんが、自分で準備する場合には、訴訟内容として賠償金の請求額や請求理由、根拠となる明確な証拠などを記入します。作成が完了したら裁判所に提出し訴訟請求を行います。

裁判は弁論型式で争われる

訴状を裁判所が受理し裁判の日程が定まると、口頭弁論が実施されます。口頭弁論では被害者と加害者双方の言い分を裁判官が聞く機会になります。被害者はなぜ訴訟するに至ったのか、加害者側の誠意のなさや対応の不備、加害者側の提示した慰謝料の額に納得できないといった点を裁判官に伝えます。裁判官は証人に対する尋問などを実施して判断します。最終的に裁判官が判決を読み上げ結審します。

交通事故の裁判における弁護士費用

交通事故の示談交渉が決裂し、裁判で争うことになる場合、弁護士に依頼する必要性が生じます。弁護士に依頼するなら、訴訟に関する手続きをすべて弁護士が代わりにしてくれますし、物的および状況証拠の収集や口頭弁論における有利な弁論なども行なってくれるので、とても力になります。弁護士に依頼したいとは思っていても、弁護士費用がかかるのでなかなかそうできないという人もいるかもしれません。裁判で争う場合、弁護士費用はどのくらいかかるのでしょうか。

着手金の額を知る

弁護士に依頼する場合に必ず支払うことになるのが着手金です。着手金を支払うことで弁護士は相談に応じてくれます。着手金は弁護士に仕事を依頼するのに必要な費用と考えたらよいかもしれません。着手金の額は決められてはいないので、弁護士事務所で尋ねる以外に把握する方法がないのが実情です。基本的に交通事故の紛争処理を依頼する場合、10万円~20万円の着手金を支払うのが相場になっています。

成功報酬の支払い

成功報酬とは示談交渉の過程で弁護士に依頼することで慰謝料などの賠償金が増額になった場合に、弁護士に支払う報酬を指します。成功報酬は必ず支払わないといけない場合や、増額になった場合にだけ支払う必要がある場合に分かれます。交通事故の場合、弁護士に支払う成功報酬の相場は、実際に増額になった分の10~20パーセントです。例えば裁判で争った結果慰謝料が500万円になった場合、弁護士には50万円~100万円を支払います。

裁判の際の費用

裁判で争う場合、弁護士に対して支払う費用が増えます。例えば訴状を作成する場合の文書作成料や印紙代などがそれに当たります。裁判では成功報酬とは別にこれらの費用を支払うことになるので、前もって弁護士に見積もりを出してもらうとよいでしょう。裁判が長期化してしまうと弁護士費用もそれに比例して増えるので、弁護士費用特約などを契約しておき、いざという時のために備えておくことが大切です。

交通事故の裁判と費用

交通事故の示談交渉に行き詰り裁判で争うことになった場合、裁判費用がいくらくらいかかるのか心配になってしまうものです。自分で訴状を作成し、訴訟に踏み切ったとしても費用がかかりますが、弁護士に依頼するとなると弁護士費用が発生するので裁判費用がさらに多くなります。なぜ費用がかかってしまうのかというと、交通事故の賠償請求に関する訴訟事件が民事裁判で争われるからです。刑事事件に関する裁判費用はかかりませんが、民事裁判となると裁判費用が発生します。

訴状を提出する際に発生する費用

裁判所に訴状を提出する場合、それに伴って所定の費用がかかります。手数料は収入印紙で支払いますが、賠償請求権を行使する場合、賠償金の請求額によって手数料が変わります。手数料は5千円~5万円前後になるので、その費用は自前で準備しないといけません。その他に発生する費用が予納郵券です。予納郵券とは郵便料金を前もって支払う制度で、裁判所にあらかじめ納める仕組みになっています。予納郵券の費用は当事者1人(原告、被告それぞれ1人)の場合で6000円、原告もしくは被告が1名追加されるごとに2000円かかります。

弁護士費用も考える

交通事故の賠償請求裁判で弁護士に弁護を依頼する場合、弁護士費用が別にかかります。弁護士費用は着手金と成功報酬に分かれますが、弁護士に訴状の提出を依頼する場合、前述の費用に加えて所定の手数料が発生します。着手金だけでも10万円~30万円程度かかるので、弁護士に依頼する場合、弁護士費用が100万円を超えてしまう場合もあります。

いざという時の補償

弁護士費用を含め、訴訟となると莫大な費用がかかります。普段の生活で訴訟自体が身近なものではないので、実際にいくらかかるかについて知っている人はほとんどいないのが実情かもしれません。そのような場合に備えて、自動車保険の弁護士費用特約を付帯しておくと良いでしょう。訴訟にかかる費用もカバーできるので訴訟費用を気にせずに賠償請求ができます。

交通事故の示談交渉を裁判でするメリット

交通事故の示談交渉は必ずしも円満解決に至るわけではありません。示談交渉が難航してしまうと、被害者、加害者双方にとって不利益が及びます。お互いに譲歩することができればよいと思うかもしれませんが、交通事故による精神的なダメージや、経済的な損失は大きいので、被害者からしてみれば希望通りの賠償をしてもらいたいと思うものです。示談交渉が決裂してしまった場合に取るべき手段として裁判があります。裁判で争うことにはどんなメリットがあるのでしょうか。

賠償金の額が上がる可能性

裁判で争うことのメリットとして、賠償金の額が上がる可能性があります。なぜ訴訟を起こすと賠償金が上がるのでしょうか。慰謝料をはじめとする賠償金額を計算する場合、任意保険基準と弁護士基準と呼ばれる算定方法があります。この二つの基準は補償額が異なっていて、弁護士基準で賠償金を算定すると任意保険基準の1.5倍から2倍もの賠償金が得られる可能性があります。裁判で争う場合、弁護士基準を上回る裁判所規準が適用される可能性があるので、賠償金額がさらに増えるかもしれません。

弁護士費用が補償される可能性

裁判で争う別のメリットに弁護士費用の補償があります。弁護士費用には成功報酬が含まれますが、成功報酬は賠償金額の10%程度が相場です。裁判で争い被害者側(原告)が勝訴すると、弁護士費用分が判決の賠償金に上乗せされます。仮に弁護士費用特約で弁護士費用を受け取った場合、裁判の結果によっては弁護士費用分も受け取れるので、賠償額がさらに増加する可能性があります。

弁護士と相談する

裁判で争うことには一定のメリットがありますが、訴訟を起こす前に、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は訴訟に踏み切った場合に勝てる見込みがあるかどうかを分析するだけでなく、損失や得られる可能背のある利益についても算定してくれます。被害者にとって有利な状況だと思える場合には、弁護士が訴訟のゴーサインを出してくれるので安心できます。

交通事故の裁判のデメリット

交通事故の賠償請求を裁判で争う場合、示談交渉よりも賠償金額を増やせる可能性があります。そのため交通事故の賠償請求は裁判で争う方が良いといった意見が散見されます。裁判で争う場合、勝訴すれば賠償請求が有利になりますが、必ずしも裁判で勝てるとは限りません。裁判に持ち込んだのに思ったようにはいかなかった、と後悔してしまう前に、交通事故の示談を含め裁判で争う場合のデメリットをチェックしておくことをお勧めします。

裁判費用がかかる

デメリットとして裁判費用がかかってしまうという点があります。裁判費用は訴状を提出する際に必要になる印紙代や被告側への訴状の送付で発生する郵送費などが発生します。賠償金額によって印紙代は変わりますが、数万円もの出費が発生する場合があります。弁護士に依頼する場合には、弁護士費用を支払う必要があるので、裁判関連費用はかなりの金額になってしまう可能性があることを予測しておかないといけません。裁判に持ち込もうとしたものの、費用が払えないというのでは意味がなくなってしまうからです。

勝訴するとは限らない

裁判では物的証拠や状況証拠、目撃証言や意見陳述を参考に、裁判官が判断し採決を行います。交通事故の被害者であれば、裁判では有利に進むと思うかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。なぜかというと、訴えた内容がすべて受け入れられるとは限らないからです。場合によっては賠償金の支払いを命じる判決が出ても、訴状で提出した賠償額が満額認められないケースもあります。

判決までに時間がかかる

裁判で争う場合、判決が出るまでにかなりの時間がかかる場合があります。加害者側が弁護士を立てたり、保険会社が対応したりする場合、被害者に有利に物事が進むとは言えず、和解案の提案などに切り替わることもあります。どの場合でも裁判が結審するまで1年以上もかかってしまう可能性があるので、賠償金の受け取りが遅くなってしまうことがあります。

交通事故の裁判と過失割合

交通事故の被害に遭った場合、加害者側の責任割合が10割になるケースは限定されてしまいます。その理由は交差点などでの出会い頭の衝突事故などの場合、必ず過失割合が決められるからです。過失割合が設定されると、過失割合に応じて被害者の治療費や慰謝料の賠償金が減額されてしまいます。賠償金の額を増やすためには、被害者側の過失割合を減らす必要があります。そのために裁判を利用する方法があります。

過失割合はだれが決めるのか

過失割合を決めるのは警察ではありません。過失割合は保険会社が事故の実況見分などの調書や事故現場の視察に基づく客観的な判断、加害者と被害者双方へのヒヤリングに基づいて決定します。過失割合は保険会社主導で行われるので、被害者にとっては決定した過失割合を不服と感じるかもしれません。そのような場合、裁判で過失割合を変えてもらうことができます。

加害者の過失割合が10割のパターン

加害者側の過失割合が10割(加害者が全責任を負う)のケースとは、信号待ちの車列に衝突した場合など、条件が定められています。過失割合が10割だと、被害者は治療費の負担や慰謝料の減額がなくなるため、損害賠償請求で認められた額がそのまま支払われることになります。過失割合が10割だと賠償金の額は増えますが、自分が加入する自動車保険の示談交渉サービスを利用できなくなるため、加害者側のペースで交渉が進められてしまう恐れがあります。そうならないために弁護士に依頼したり、裁判で争ったりします。

裁判で過失割合を争う

裁判で過失割合を争う場合、物的、状況証拠や口頭弁論の内容に基づいて裁判官が判断することになります。既に保険会社が過失割合を決めているのであれば、なぜその決定が不服なのかを説明できるだけの証拠が必要です。証拠がそろっているのであれば、裁判で争う価値がありますが、証拠がない場合は証拠不十分で棄却される可能性があります。そのような場合に備えて、弁護士に依頼して解決を目指せます。

交通事故の裁判と算定基準

交通事故の示談交渉で慰謝料などの賠償金についての話し合いを行いますが、示談交渉の過程で適用される慰謝料は保険会社が定める任意保険基準と呼ばれる算定方法で計算されるため、提示される慰謝料の金額が少ないと感じる可能性があります。任意保険基準は自賠責保険の補償額よりも額は多いものの、補償額はそれほど高いとは言えません。そこで賠償金を納得できる金額にするために弁護士に依頼したり、裁判で争ったりする場合があります。

弁護士基準

示談交渉でより多くの賠償金を請求する場合には、弁護士に依頼して弁護士基準を適用してもらいます。弁護士基準とは過去の判例に基づいて日本弁護士会が作成した算定基準に基づいています。そのため任意保険基準よりも補償額が多いという特徴があります。弁護士基準はだれでも適用してもらえるわけではなく、基本的に弁護士に依頼して加害者側と交渉を行い適用するというのが主な流れです。弁護士基準は裁判所の判例に基づいているわけですが、裁判で争う場合、賠償金はどうなるのでしょうか。

裁判所規準

裁判で慰謝料を含めた賠償金に関する訴訟を行なう場合、裁判所は原告側の訴えに基づいて口頭弁論を実施し、賠償金を決定します。証拠が提出され、原告の訴えが理に適っていることが証明されると裁判官は慰謝料などの賠償金を決定します。訴状で提出した賠償金額を認める場合や、そうでない場合もあります。場合によっては訴状で提出した金額を上回る賠償金が認められることもあります。

いずれの場合も弁護士へ

弁護士基準を適用して賠償金請求を行うとしても、裁判で賠償金について争うとしても、弁護士に依頼する方が有利です。自分で裁判にかけることもできますが、法廷での訴訟慣れしていない場合、不利になる可能性があるので避けた方が良いでしょう。交通事故に強い弁護士は訴訟経験が豊富で、裁判でどれくらいの賠償金が支払われるかについても的確に判断できます。弁護士は被害者の状況を踏まえて適切に対応してくれるので、裁判で勝訴する可能性が高くなります。